【決定版】売れる営業の「思考OS」─ サラリーマン思考を破壊し、「稼ぐ人」に変わる2つの絶対習慣
はじめに:なぜ、同じ時間働いても、あなたと彼の「価値」は100倍違うのか?
「売れる営業と、売れない営業の違いは何ですか?」
こんにちは。営業組織の戦略設計と人材育成を担う筒井です。 この問いは、私がキャリアを通じて、それこそ何千回と聞かれてきた、最も本質的な問いの一つです。
多くの人は、その違いを「トークの上手さ」「知識量」「人柄」といった、目に見える「スキル(アプリケーション)」の差だと考えます。 もちろん、それらも重要です。しかし、根本的な違いは、そこにはありません。
結果を出し続ける「売れる営業」と、常に時間に追われ疲弊する「売れない営業」。 彼らを隔てる唯一にして絶対的な違い。 それは、彼らの頭の中にインストールされている、「思考OS(オペレーティング・システム)」そのものが違う、という事実です。
この記事は、2019年に私が一度提示した「思考」に関する理論を、数年間のさらなる実証と数百名の育成データに基づき、2025年の「決定版」として再構築するものです。
この記事で解き明かすのは、小手先のテクニックではありません。 あなたの営業としての「価値」を根本から再定義し、「時間」の対価として給料をもらう「サラリーマン思考」を破壊し、「価値」の対価として自ら稼ぐ「ビジネスマン思考」へと、あなたのOSを強制的にアップデートするための、思考の設計図です。
第1章:「サラリーマン思考」という病 ─ あなたは“非”経済活動で時間を浪費していないか
まず、残酷な現実からお話しなければなりません。 あなたは「仕事をしている」つもりで、実は「非経済活動」に、あなたの貴重な人生の時間を浪費している可能性があります。
私は、人間の活動を以下の2つに分類しています。
- 経済活動(=ビジネスマン思考)
- 定義: 自らの「思考」と「行動」によって、新たな価値を創造し、その対価としてお金を生み出す(稼ぐ)活動。
- 例: 課題の仮説を立てる、顧客の潜在ニーズを掘り起こす、新しい提案を設計する。
- 非経済活動(=サラリーマン思考)
- 定義: 指示された「時間」や「労働力」を提供し、その対価としてお金を受け取る(もらう)活動。または、価値を生まず時間を消費する活動。
- 例: 指示された見積書を“ただ”作る、お客様の「御用聞き」に徹する、社内会議で“ただ”座っている。
お分かりでしょうか。 会社に勤めて「仕事」をしていても、その実態が「言われたことだけをやる」「時間を切り売りする」ものであれば、それは**本質的に「非経済活動」**であり、アルバートと何ら変わりありません。
「給料をもらう」というサラリーマン思考のOSは、あなたを「会社の歯車」として最適化しますが、「あなた自身の価値」を高めることは決してありません。 このOSがインストールされたままである限り、あなたは一生、会社と時間に縛られ、「稼ぐ」という感覚を知ることはできないのです。
「知っている」と「稼げる」は、全く別物
「思考が行動を変え、行動が結果を生み出す」 これは、私が指導してきた全てのトップ営業(=ビジネスマン思考の持ち主)に共通する絶対法則です。
彼らは、「知っている」ことでは1円にもならないことを知っています。 彼らは、「学ぶ(インプット)」ことが目的ではなく、「価値を創造する(アウトプット)」ことだけが、自らの価値を高める唯一の手段であることを知っています。
(この「インプット」と「アウトプット」の致命的な違いについては、こちらの記事で科学的に解説しています
👉そのロープレ、時間の無駄。─ 研修効果を「結果」に変える、アウトプットの科学)
稼げる営業になるには、まずOSを入れ替えること。 そして、経済活動の「回数」を増やすこと。 そのために、あなたの「思考」を「行動」に変える、**2つの強力な「習慣(アプリケーション)」**を、これからインストールします。
第2章:習慣①「即時実行」─ なぜ、トップセールスは異常に“初動”が早いのか
ビジネスマン思考の営業に共通する、一つ目の習慣。 それは、**「初動が、異常に早い」**ということです。
彼らは、物事を「後回し」にするという思考回路を持っていません。 なぜなら、**「お客様の温度感(熱量)」こそが、契約を左右する最も重要な「資源」**であり、その資源は「時間」と共に、刻一刻と失われていくことを、本能レベルで理解しているからです。
「急ぎではない」という、最大の罠
ここで、典型的な「サラリーマン思考」の営業が陥る罠を見てみましょう。
- お客様: 「A社の件、急ぎではないんだけど、参考までに見積書をもらえるかな?」
- サラリーマン思考(非経済活動):
- 「(急ぎではないなら、他の優先業務が終わってからにしよう)」
- → 2日後、見積書をメールで「送るだけ」。
- → お客様の熱量はすでに冷め、「ありがとう(=検討リストの末尾に追加)」で終わる。
彼らは「見積書を送る」という「作業(非経済活動)」しか見ていません。 しかし、ビジネスマン思考の営業は、全く違うOSで動きます。
- お客様: 「A社の件、急ぎではないんだけど、参考までに見積書をもらえるかな?」
- ビジネスマン思考(経済活動):
- 「(『急ぎではないが、今欲しい』。この“今”という温度感こそが、最大のチャンスだ!)」
- → 即日、見積書を送付する。
- → 送付直後、必ず電話する。
- 「〇〇様、先ほど見積書をお送りしましたが、ご覧いただけそうでしょうか? せっかくの機会ですので、この見積もりの『背景』にある、〇〇様の課題について、あと5分だけ、私にお時間をいただけませんか?」
「即時実行」が生み出す、圧倒的な“時間価値”
同じ24時間でも、彼らの「時間の密度」は全く異なります。 ビジネスマン思考の営業は、「即時実行」することで、サラリーマン思考の営業が「失った時間」を、全て「経済活動」の時間に変えているのです。
- 疑問があれば、「後で調べる」ではなく「今、スマホで調べる」。
- 課題があれば、「いつかやる」ではなく「今、仮説を立てる」。
- セミナーで学べば、「満足する」のではなく「明日、商談で使う」。
この「初動の速さ」こそが、全てのチャンスを掴むための、第一の習慣です。 「行動する」のは簡単そうですが、97%の人間は行動しません。 あなたは、今日から「即時実行する3%」の人間になってください。
第3章:習慣②「仮説思考」─ なぜ、彼らの準備は“未来”を見据えているのか
二つ目の習慣。 それは、「常に『仮説』を立てている」ということです。
サラリーマン思考の営業は、「過去(=お客様に言われたこと)」に対応します。 ビジネスマン思考の営業は、「未来(=お客様がまだ気づいていないこと)」を創造します。
そして、その「未来」を創造する唯一の武器が、「仮説思考」なのです。
「仮説なき準備」は、準備ではない
「売れる営業は準備が大切だ」 これは、誰もが知る“正論”です。 しかし、両者の「準備」の定義は、根本から異なります。
- サラリーマン思考の「準備」:
- 行き当たりばったり。
- 「何を話そうか」を考える。
- 商談の場で、「何かお困りですか?」と“御用聞き”を始める。
- (→これは「準備」ではなく、お客様の時間を奪う「怠慢」です)
- ビジネスマン思考の「準備」:
- 徹底的なリサーチに基づく。
- 「お客様の課題は、きっと〇〇のはずだ」という「仮説」を、考えられる限り(最低5つ以上)立てる。
- その仮説を検証するための「質問(=ヒアリング)」を設計する。
例えば、ホームページの営業マン(ビジネスマン思考)が、「既存HPを持つお客様」にアポを取ったとしましょう。 彼は、商談の場で「お困りごとは?」とは聞きません。 商談の「前」に、以下の仮説を立て、その「解決策」までを準備していきます。
- 仮説1(デザイン): 「デザインが古い。スマホ対応も遅れている。しかし、お客様は『動いているから問題ない』と誤解しているのではないか?」
- 仮説2(コスト): 「月額の保守費用が、相場より高い。お客様はそれに気づいていないのではないか?」
- 仮説3(集客): 「SEO対策が一切されていない。お客様はHPを『名刺代わり』だと思っており、『集客装置』にできるという可能性を知らないのではないか?」
- 仮説4(運用): 「更新作業が複雑そうだ。お客様は『簡単なブログ更新も、業者に頼むしかない』という手間にストレスを感じているのではないか?」
「仮説」こそが、「価値」の源泉である
お分かりでしょうか。 彼の準備は、お客様がまだ言語化できていない「潜在的な課題」と「未来の可能性」を、先回りして創造する「経済活動」そのものです。
商談の場は、彼にとって「答え合わせ(=仮説検証)」の場です。 「〇〇様、HPのデザイン、素晴らしいですね。ただ、拝見したところ、もしかして『更新の手間』に、少しストレスを感じていらっしゃったりしませんか…?」
この「仮説思考」をベースにしたヒアリングこそが、お客様に「この人はプロだ」と一瞬で理解させ、絶対的な信頼を勝ち取る「価値」の源泉なのです。
(この「仮説」をベースにしたヒアリングの全技術は、こちらの記事で科学的に解説しています
👉ヒアリングの科学 ─ 9割の営業が知らない「良い質問」の全技術【詳細解説版】)
第4章:「なぜ?」から始める、"仮説OS"のインストール方法
「仮説思考が重要なのは分かった。だが、どうすれば身につくのか?」
サラリーマン思考のOS(=受動的)に慣れきった脳を、ビジネスマン思考のOS(=能動的)に入れ替えるには、強制的なトレーニングが必要です。
その最も簡単で、最も強力な方法。 それは、日常生活の全てにおいて、「なぜ?」「どうして?」と、自分自身に問いかける“クセ”をつけることです。
- 「なぜ、あのコンビニは、レジ横にこの商品を置いたんだろう?」
- (→仮説:雨が降りそうだから、傘ではなく「濡れた服を拭くタオル」を置いた?)
- 「なぜ、あの上司は、今、あの指示を出したんだろう?」
- (→仮説:私を試している? それとも、その裏にある別のプロジェクトが動いている?)
- 「なぜ、このお客様は、『急ぎではない』と“あえて”言ったんだろう?」
- (→仮説:私に期待していない? それとも、社内の稟議を通すためのアリバイ作り?)
脳は、問いかけられれば、必ず「仮説」という名の答えを探し始めます。 日常生活で「なぜ?」を繰り返すことで、あなたの脳は、物事の表面(Fact)ではなく、その裏にある意図(Intent)を探る「仮説思考」のOSへと、強制的に書き換えられていきます。
この「仮説力」こそが、あなたの「準備」の質を飛躍的に高め、商談における「経済活動(=価値創造)」の精度を爆発的に向上させるのです。
第5章:「量質転化」を起動させる2つのエンジン
ここまで、「即時実行(初動の速さ)」と「仮説思考(準備の深さ)」という、2つの習慣を解説しました。 なぜ、この2つが揃うと、営業は「稼げる」ようになるのでしょうか?
それは、この2つの習慣が、**「量質転化(りょうしつてんか)」**という、成果を出すための絶対法則を起動させる「2つのエンジン」として機能するからです。
- 「即時実行」が、圧倒的な「量」を生み出すエンジンとなる。 (サラリーマン思考の営業が1回行動する間に、あなたは3回行動できる)
- 「仮説思考」が、その「量」を「質」に転換するエンジンとなる。 (1回1回の行動(商談)が、仮説検証の場となり、改善のスピードが劇的に上がる)
多くの人は、この「量質転化」の法則を知りません。 彼らは「質」の高い行動が「量」を生むと誤解しています。 逆です。圧倒的な「量」こそが、「質」を生み出す唯一の道なのです。
(この「量質転化」の法則については、別の記事で詳細に解説しています:
👉なぜ、あいつの「量」は「質」に変わるのか? 営業の「量質転化」を促すたった1つの着火点)
「即時実行」で行動量を増やし、「仮説思考」でその行動の質を高める。 この両輪が高速で回転し始めた時、あなたの成長は指数関数的に加速します。
まとめ:3ヶ月で、あなたは「別人」になれる
今回、あなたの思考OSをアップデートするために、2つの習慣をインストールしました。
- 即時実行: お客様の「温度感」を逃さず、行動の「量」を最大化する。
- 仮説思考: 「なぜ?」を繰り返し、行動の「質」を飛躍的に高める。
どんな習慣も、3ヶ月続ければ、必ず体に染み付きます。 最初は意識的で、ぎこちなくても構いません。
まずは3ヶ月、この2つの習慣を、根気よく続けてみてください。 3ヶ月後には、「言われたことをやる」というサラリーマン思考は消え去り、あなたの脳は「次に何を創造しようか?」と考える、ビジネスマンのOSに書き換わっているはずです。
「給料をもらう」という発想を、今日、今すぐ捨ててください。 あなたの「思考」と「行動」で、自ら価値を生み出し、「稼げる営業」を目指す。 その先にしか、この仕事の本当の面白さと、あなたの本当の価値はありません。
1400名規模のITベンチャー企業の営業部長・現ストラテジスト。
これまでに300名以上の営業マンの育成や営業組織の設計に携わり、商談スクリプトの構築や各業界のトップセールスの営業スキルの暗黙知を形式知にするなどの教育メソッドを体系化。
営業を「属人的な才能」ではなく「再現できる仕組み」として確立することを専門領域としている。
本サイトでは、営業力を高めたい個人や、営業教育を仕組み化したい法人に向けて、現場で成果を出すためのノウハウと知見を発信している。

