【実体験】営業スランプで辞めたいあなたへ。転職を考える前に試した私の5ステップ

はじめに:「受話器が鉛のように重かった」あの頃の私へ

「先月はあんなに調子が良かったのに、今月は1件も契約が取れない…」 「また断られるのが怖くて、アポイントの電話がかけられない…」 「なんで自分だけ…もう、営業なんて辞めたい」

こんにちは、美咲詩乃です。

もしあなたが今、こんな風に暗いトンネルの中で一人しゃがみ込んでいるような気持ちなら、少しだけ私の話を聞いてください。

何を隠そう、これらは全て、数年前の私が実際に感じていたことです。特に忘れられないのは、新人時代に経験した3ヶ月間の長いスランプでした。電話をかけるのが怖くて、受話器を握りしめたまま、ただ時間だけが過ぎていく。会社のデスクで、自分がどんどん無価値な人間に思えて、毎朝「会社に行きたくない」と涙をこらえていました。

「自分には営業の才能がないんだ」と本気で思い詰め、毎晩のように転職サイトを眺めてはため息をつく日々。

でも、そんなドン底の状態だった私でも、今では営業を「自分のキャリアを拓いてくれた、やりがいのある仕事」だと心から思えるようになりました。

その大きなきっかけとなったのが、このサイトの監修者でもある、当時の私の上司・筒井さんからの言葉と、自分なりにもがきながら実践したいくつかの試行錯誤でした。

この記事では、評論家のような難しい話はしません。一人のセールスとして、私が実際に悩み、苦しみ、そして抜け出した「営業スランプから脱出するための5つの具体的な方法」を、当時の私の感情や筒井さんとのやり取りも交えながら、正直にお話しします。

今すぐ転職活動を始めるその前に、一度だけ、騙されたと思って試してみてほしいのです。


なぜ、あなたはスランプに陥るのか?私の「沼」体験

営業スランプには、大きく分けて自分ではどうにもできない**「外的要因」と、自分の心や行動に起因する「内的要因」**があります。

  • 外的要因: 競合の強力な新商品、市場の冷え込み、会社の都合による担当エリアの変更など。
  • 内的要因: 過度なプレッシャー、成果が出ないことによる自信喪失、モチベーションの低下、準備不足など。

そして、ほとんどのスランプの入り口は、後者の「内的要因」です。

当時の私も、まさにそうでした。きっかけは、たった1件の大型案件の失注。そこから歯車が狂い始めました。「あの失敗を取り返さないと」という焦りが空回りし、小さなミスを連発。気づけば、ノルマの未達が2ヶ月続き、私は完全に自信を失っていました。

「どうせ私が電話しても、誰も話なんて聞いてくれない」 「私からの提案なんて、お客様は迷惑なだけだ」

そんな風に、自分自身で「売れない理由」を探しては、行動しない自分を正当化するようになっていたのです。まさに、自分で作り出した「沼」に、自ら沈んでいくような感覚でした。

見かねた筒井さんに面談で打ち明けた時、彼から返ってきた言葉を今でも鮮明に覚えています。

「美咲さん、それは能力不足じゃない。今の自分と、“環境ややり方”がミスマッチを起こしているだけ。才能がないなんて1ミリも思わないで。焦らず、一つひとつ原因を分解して、絡まった糸を解いていこう」

この言葉が、私の長いスランプからの復活劇の、始まりの合図となりました。


転職は「逃げ」じゃない。でも「最後の選択肢」である理由

スランプが続くと、「この会社が合わないんだ」「環境を変えればうまくいくはずだ」と、どうしても転職に意識が向きがちです。当時の私も、リクルートスーツをクローゼットの奥から引っ張り出そうとしていました。

そんな私に、筒井さんはこう言いました。

「美咲さん、環境を変えるのは最後の選択肢だよ。なぜなら、今の場所で自分の課題と向き合わず環境だけ変えても、ほぼ100%、次の職場でも同じ壁にぶつかる。それは“転職”じゃなく、ただの“現実逃避”になってしまう。まずは、今の場所で、自分の“行動”を変える努力をやり尽くしてみよう」

このアドバイスに従い、私は以下の5つのステップを試すことにしました。 結果として、私は数ヶ月後には営業成績をV字回復させ、失いかけていた自信を取り戻すことができたのです。


営業スランプ脱出法①:目標を「契約」から「行動」に切り替える

当時の私の目標は「今月、残り10件の契約を取る」でした。あまりにも現実離れした、大きすぎる目標です。達成できるイメージが全く湧かず、その目標を見るたびに、逆にやる気を削がれていました。

その話をすると、筒井さんは呆れたように笑ってこう言いました。

「いきなりホームランを狙うのはやめよう。バットにボールが当たらない選手がまずやるべきは、素振りでしょ?目標を、自分で100%コントロールできるものに変えよう」

そこで私は、目標を「1日に最低3件、目的を持ったアポイントの電話をする」という、極めて小さなものに再設定しました。

「契約」という結果は、お客様の都合やタイミングなど、自分ではコントロールできない要素が多く絡みます。しかし、「電話を3件かける」という行動は、私自身の意志だけで100%達成可能です。

朝、手帳に書いた「電話3件」というタスクを終えると、横に大きな花丸をつける。たったそれだけのことですが、「今日も自分は目標を達成できた」という小さな成功体験が、驚くほど私の心を軽くしてくれました。

人間は、大きな成果を一発で出すよりも、「小さな達成感」を日々積み重ねることで、着実に前進していると実感できる生き物なのです。まずは、結果目標ではなく、行動目標に切り替える。これが、沼から這い出すための最初の、そして最も重要な一歩です。

営業スランプ脱出法②:「売る」のをやめて、お客様の「声」を聴く

売れない時期の私は、「どうやって売るか」ばかりを考えていました。必死に商品のメリットを並べ立て、強引にクロージングをかけようとしては、お客様に引かれてしまう。悪循環でした。

そんな私に筒井さんがかけた言葉は、「売るな、聴け」でした。

「お客様がなぜ今、契約しないのか。その本当の理由を美咲さんは知らないでしょ。知ったかぶりで喋るな。まずは目の前のお客様の、一番の専門家になること。そのためには、聴くしかない」

その日から、私は商談のスタイルを180度変えました。提案資料を話す時間を3分の1に減らし、残りの時間を全てお客様への質問とヒアリングに充てたのです。

あるお客様に「率直にお伺いしたいのですが、今回のご提案で、一番導入を迷われている点はどこでしょうか?」と勇気を出して聞いた時のこと。返ってきた答えは、意外なものでした。

「美咲さんの提案は素晴らしいと思っているんです。ただ、うちの会社は稟議の決裁にどうしても1ヶ月かかる。それだけなんです」

私は衝撃を受けました。提案内容に不満があって沈黙しているのだと、勝手に思い込んでいたのです。この経験から、「お客様の沈黙は、拒否ではなく、情報不足や内部事情のサインであることの方が多い」という、極めて重要な学びを得ました。

スランプの時こそ、売り込む拳を下げて、お客様の本当の声を聴くことに集中してみてください。そこに、必ず突破口が隠されています。

営業スランプ脱出法③:他人の「正解」を捨て、自分の「勝ち筋」を見つける

新人時代の私は、トップセールスだった先輩のやり方を、一言一句そのまま真似していました。しかし、全く成果は出ませんでした。

そのことを筒井さんに相談すると、筒井さんはこう指摘しました。

「その先輩は、ロジカルな説明が得意で、自信に満ちた話し方をするタイプだよね。でも美咲さんは、相手に共感して、丁寧に話を聞くのが得意だよね。なぜ、自分の武器を捨てて、他人の鎧を着ようとするの?」

私はハッとさせられました。自分に合わないやり方を無理に続けて、自分で自分を苦しめていたのです。

そこで、私は自分の強みを活かしたスタイルに切り替えました。

  • 電話で一発でアポを取るのが苦手 → 先に丁寧なメールと分かりやすい資料を送付し、相手が情報を理解した上で電話するスタイルに変更。
  • ロジックで論破するような提案が苦手 → お客様と似たような課題を抱えていた企業の成功事例を、ストーリー仕立てで紹介する提案を多めに。

このように、自分の性格や得意なことに合わせて手法を少し変えただけで、お客様の反応が劇的に良くなり、商談の成約率も向上したのです。

スランプは、これまでのやり方を見直す絶好のチャンスです。他人の真似をするのではなく、**「自分らしい勝ちパターンは何か?」**を問い直してみてください。

営業スランプ脱出法④:「一人」で戦うのをやめ、「チーム」を頼る

スランプに陥っていた頃の私は、「成績が悪いのに、人に相談するなんて恥ずかしい」「自分の問題は、自分で解決しなければ」と、頑なに心を閉ざしていました。一人で抱え込み、どんどん孤独になっていったのです。

そんな姿を見て、筒井さんはチームのミーティングでこう言いました。

「チームは、数字を競い合うだけの敵の集まりじゃない。互いの知恵と経験をシェアし、困っている仲間を助けるための共同体だ。一人で解決できない問題を放置することこそ、チームに対する最大の裏切りだぞ」

その言葉に背中を押され、私は勇気を出して同期の友人に「実は今、全然売れなくて、もう辞めたいくらい悩んでるんだ」と打ち明けました。すると彼女は、「なんだ、早く言ってよ!実は私も同じだよ」と笑い飛ばしてくれたのです。

その瞬間、張り詰めていた糸が切れ、涙が溢れました。そして、お互いの失敗談を共有するうちに、「そんなやり方があったのか!」と、自分では思いつきもしなかった解決策のヒントがいくつも見つかりました。

孤独は、スランプという病を悪化させる最大のウイルスです。 恥を忍んで、仲間を頼ってください。それだけで、あなたが背負っている重荷の半分は、きっと軽くなるはずです。

営業スランプ脱出法⑤:「コミュニケーション」をスキルとして磨き直す

スランプの時期は、お客様との会話がぎこちなくなりがちです。私も、焦りからか早口になったり、お客様の前で笑顔が引きつったりして、商談の雰囲気を自ら悪くしていました。

そこで意識したのが、**「まず、聴く」**という全てのコミュニケーションの基本に立ち返ることでした。

会話の主導権を握ろうとせず、相手の言葉を遮らずに、最後まで聴き切る。ただそれだけで、商談の空気がふっと和らぎ、お客様が本音を話し始めてくれるようになったのです。

さらに、筒井さんにお願いして、私のプレゼンテーションを録音したものを聞いてもらい、具体的なフィードバックをもらいました。「結論から話すクセをつけよう」「この部分は、もっと自信を持って言い切った方がいい」など、客観的な指摘を受けることで、自分の話し方を劇的に改善できました。

営業は、才能ではなく「スキル」です。 そしてスキルは、正しい訓練を積めば、後からいくらでも伸ばすことができます。スランプの時こそ、基本に立ち返り、自分のコミュニケーションスキルを磨き直す良い機会なのです。


ここまでやり切ってもダメなら…それは「戦略的転進」だ

5つのステップを全て試しても、どうしても成果が出ない。会社の雰囲気になじめない。扱っている商材に、どうしても愛情が持てない。

そういうこともあるでしょう。私も一度、「これ以上は、この環境にいる限り無理かもしれない」と本気で思ったことがあります。

その想いを筒井さんに伝えた時、彼はこう言ってくれました。

「よくここまでやり切ったね。ここまで自分の課題と向き合い、行動を尽くした上での決断なら、それは“逃げ”じゃない。美咲さんのキャリアにとって、最も正しい“戦略的な選択”だよ」

努力を尽くした上での転職は、決して敗北ではありません。それは、自分という資源を、より輝ける場所へと移すための、ポジティブな「戦略的転進」なのです。

私も、転職という選択肢を視野に入れたことで、逆に気持ちが楽になり、「最後にもう一度だけ頑張ってみよう」と前向きなエネルギーが湧いてきたのを覚えています。


まとめ:営業スランプは、あなたが「進化」する前のサイン

営業スランプは、本当に苦しいものです。しかし、それは決して、あなたのキャリアの終わりを告げるものではありません。

むしろ、これまでのやり方が通用しなくなった、あなたが次のステージへ「進化」するための重要なサインなのです。

  1. 小さな「行動目標」で、達成感を取り戻す
  2. 「売る」ことを忘れ、お客様の「声」を深く聴く
  3. 他人の正解を捨て、自分だけの「勝ち筋」を見つける
  4. 孤独に戦わず、チームという「仲間」を頼る
  5. 基本に立ち返り、「コミュニケーションスキル」を磨き直す

これらのステップを実践すれば、あなたの目の前にある分厚い壁は、必ず乗り越えられます。 そして、もし、ここまでやり切った上で、それでも環境を変えたいと思うなら、胸を張って次のステージへ進んでください。その経験は、あなたのキャリアをより豊かなものにする、かけがえのない財産になっているはずですから。

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