【失敗談】私がトップセールスになるまでにした、3つの大きな勘違い ─ 明日から使える「本当の共感」の技術

はじめに:私も、ずっと「営業に向いていない」と思っていました

「美咲さんは、本当に優しい人だね」

昔から、人によくそう言われてきました。学生時代のアルバイトでも、部活でも、その言葉は私にとって、ささやかな自信でした。でも、営業の世界に飛び込んでから、その言葉は重たいコンプレックスに変わりました。

  • お客様に強く切り返せない。
  • 無理な値引き交渉を、断れない。
  • 沈黙が怖くて、つい余計なことを喋ってしまう。

内向的で、人見知りで、極度の緊張しい。そんな性格の私にとって、自信に満ち溢れ、雄弁に語る営業の世界は、まるで外国語で話されている映画の中にいるような、息苦しい場所でした。成果は一向に上がらず、上司からは「お前は営業に向いていない」と毎日のように叱責され、自分でも心の底から「私は、営業という仕事を選んでしまった、最大の失敗者だ」と本気で思い詰めていたのです。

もし、この記事を読んでいるあなたが、かつての私と同じように、

「自分は優しすぎるから、営業には向いていない…」 「内向的な性格だから、売れるわけがない…」 「お客様に嫌われるのが怖くて、何も言えなくなってしまう…」

そんな風に感じているのなら、少しだけ、私の話に付き合ってもらえませんか?

断言します。トップセールスになるために、あなたの「優しさ」を捨てる必要は全くありません。 内向的な性格を、無理やり変える必要もありません。

私が「置物」と揶揄された売れない営業から、トップセールスと呼ばれるようになるまで。その道のりは、特別な才能や、魔法のようなテクニックを手に入れたからではありません。

たった3つの、致命的な「勘違い」に気づき、本当の意味での「共感」の技術を学んだから。

ただ、それだけなのです。

この記事は、特別なスキルを持たなかった私が、どうやって壁を乗り越えてきたのか。その過程で犯した大きな失敗と、そこから学んだことの全てを記録した、私の航海日誌です。

あなたのその「優しさ」や「繊細さ」は、弱みではありません。正しく使えば、お客様の心を誰よりも深く動かす、最強の武器になります。

さあ、一緒に「本当の共感」を探す旅に出ましょう。

第1章:【勘違い①】「お客様に好かれなければならない」という呪い

営業としての一歩を踏み出した私が、最初に囚われたのが、この「お客様に好かれなければならない」という、強迫観念にも似た呪いでした。

私の失敗談:「いい人」を演じるほど、お客様の心が離れていった日々

新卒で営業職に就いた私は、営業スキルも、業界知識もゼロ。そんな自分にある唯一の取り柄は「人当たりの良さ」だと思い込んでいました。だから、とにかくお客様に嫌われないように、「いい人」でいることだけを必死に考えていたのです。

ある日、従業員50名ほどの運送会社の社長様との商談が決まりました。初めての単独での大きな商談。私は舞い上がり、前日からロープレを繰り返し、完璧な準備で臨みました。

しかし、いざ社長を目の前にすると、頭が真っ白になりました。沈黙が怖くて、天気の話や、最近のニュース、社長の趣味の話など、本題とは全く関係のない世間話ばかりを続けてしまいました。「この人は話しやすいな」と思われたかったのです。

やっとのことで商品紹介に移っても、断られるのが怖くて、商品のメリットばかりを強調し、少しでもお客様が懸念しそうなデメリット(価格や導入期間など)は、聞かれるまで隠していました。

社長は穏やかに話を聞いてくれましたが、最後にこう言われました。

「美咲さん、色々ありがとう。君がいい人なのはよく分かったよ。でも、うちが今欲しいのは、話し相手じゃないんだ。悪いけど、今回は見送らせてくれ」

商談後、一人になった電車の中で、涙が止まりませんでした。良かれと思ってやっていたことの全てが、裏目に出ていたのです。

  • 沈黙を恐れて続けた世間話は、「時間を無駄にする人」という印象を与えていた。
  • デメリットを隠す姿勢は、「誠実さのない人」という不信感に繋がっていた。
  • お客様の言いなりになる態度は、「プロとして頼りない、ただの便利な業者」としか見られていなかった。

「いい人」を演じれば演じるほど、私はお客様からの「信頼」を失っていたのです。

筒井さんからの教え:「『好かれること』と『信頼されること』を混同している」

この失敗談を、メンターである筒井さんに打ち明けた時、彼は静かにこう言いました。

「美咲さんは、根本的な勘違いをしているんじゃないかな。営業のゴールは、お客様に『好かれる』ことじゃなくてお客様の課題を解決し、ビジネスパートナーとして『信頼される』こと。その二つは、全くの別物だよ」

衝撃でした。私の中で「好かれること」と「信頼されること」は、同じ線上にあるものだと思い込んでいたからです。筒井さんは続けました。

「医者を想像してみたらわかると思うよ。君が腹痛で病院に行った時、『大丈夫ですよ、きっと良くなりますよ』と優しく同調してくれるだけの医者と、『厳しいことを言いますが、あなたの食生活が原因です。このままだと、もっと大きな病気になりますよ』と、耳の痛い事実を指摘してくれる医者。君が本当に信頼するのは、どちらだろう?」

答えは、明白でした。

私が学んだ本当の共感とは

この経験から、私が学んだ「本当の共感」の技術は、以下の3つです。

  1. 「同調」ではなく「理解」を示すこと: お客様の言葉に、ただ「そうですよね、分かります」と合わせるのが共感ではありません。「なぜ、お客様はそう考えているのだろうか?」とその背景や価値観を深く理解しようと努め、それを自分の言葉で「〇〇というご経験をされてきたからこそ、△△というお考えになるのですね」と伝えること。これが本当の共感の第一歩です。
  2. プロとして、誠実に「NO」を言う勇気: お客様の要望が、長期的にお客様のためにならないと判断した場合。「できません」と断るのではなく、「その方法ですと、〇〇というリスクが考えられます。代替案として、△△はいかがでしょうか?」と、プロの視点から別の選択肢を提示する。その誠実な姿勢こそが、信頼を生むのです。
  3. ゴールは「パートナーになること」: 商談の目的は、仲良くなることではありません。お客様が抱える課題を、お客様以上に真剣に考え、共に解決策を探し出す「パートナー」になること。この意識を持つだけで、あなたの発言や態度は、劇的に変わるはずです。

「いい人」である必要はありません。あなたの目指すべきは、「信頼できるプロフェッショナル」なのです。


第2章:【勘違い②】「完璧な提案をしなければならない」という完璧主義の罠

「好かれること」の呪いを解いた私が、次に陥ったのが、この「完璧な提案をしなければならない」という完璧主義の罠でした。

私の失敗談:100点の提案資料に固執し、行動できずに失注した大型案件

一度目の失敗から、「信頼されるプロ」を目指すようになった私は、とにかく知識を詰め込み、誰からも論破されない、完璧な提案資料を作ることに全精力を注ぐようになりました。

ある時、業界でも有名な大手企業から、コンペに参加するチャンスをいただきました。これは会社にとっても、私個人にとっても、絶対に負けられない戦い。私は1ヶ月間、寝る間も惜しんで情報収集と資料作成に没頭しました。競合の動向、業界の最新データ、考えうる全ての質問への回答…。フォルダには、バージョン1から10までの提案資料が並び、自分でも「これ以上ない、完璧なものができた」と確信していました。

しかし、コンペ当日。自信満々でプレゼンを終えた私に、役員の方から、たった一つだけ、想定外の質問が投げかけられました。

「美咲さん、もし仮に、このプランの予算が半分になったとしたら、どこから削りますか?本当に重要なものは、何ですか?」

頭が、真っ白になりました。完璧なプランを説明することに集中するあまり、「プランB」や「プランC」といった、柔軟な発想が完全に欠落していたのです。私はしどろもどろになり、「…一度、持ち帰って検討させていただけますでしょうか」と答えるのが精一杯でした。

結果は、惨敗。後日、担当者の方からフィードバックをいただく機会があり、そこで言われた言葉が、私の胸に突き刺さりました。

「美咲さんのご提案は、本当に素晴らしかったです。ただ、少しだけ…完璧すぎました。僕たちは、コンサルタントに100点の正解を求めていたわけじゃないんです。僕たちの悩みに寄り添って、一緒に考えてくれるパートナーが欲しかったんです」

私は、お客様を置き去りにして、一人で完璧な作品作りに没頭していただけだったのです。お客様に会う回数も、他の営業より圧倒的に少なかった。お客様の「悩み」ではなく、自分の「プライド」を守るために仕事をしていたことに、この時、初めて気づかされました。

筒井さんからの教え:「営業に100点の正解はない。あるのは“より確度の高い仮説”だけだ」

この苦い経験を筒井さんに報告した時、彼は私の完璧な提案資料を一瞥もせず、こう言いました。

「美咲は、大きな勘違いをしている。営業とは、100点の完成品をお客様に見せるプレゼンテーションじゃない。60点の“仮説”をお客様にぶつけ、対話を通じて、一緒に100点に育てていく共同作業だ」

そして、こう続けました。

「君が作るべきだったのは、完璧な1つの資料じゃない。A案、B案、C案という、複数の“叩き台”だ。『もし私が社長だったらA案を選びますが、現場の負担を考えるならB案も考えられます。〇〇様は、どちらがより御社の未来に近いと思われますか?』と、お客様を巻き込むこと。それこそが、本当の提案なんだ」

私が学んだ本当の共感とは

完璧主義の罠から抜け出すために、私が学んだ「本当の共感」の技術は、以下の3つです。

  1. 60点の仮説を「相談」する: 完璧な提案を「提示」するのをやめました。その代わり、「現時点で、私はこう考えたのですが、〇〇様のご意見をお聞かせいただけますか?」と、意図的に余白を残した状態で、お客様に「相談」するスタイルに変えました。
  2. 「If(もしも)」で、相手の視点に立つ: 提案を考える時、常に「もし私がお客様の担当者だったら」「もし私が決裁者だったら」と、複数の立場になりきってシミュレーションするようになりました。これにより、一つのプランだけでなく、複数の選択肢を用意できるようになりました。
  3. お客様を「仲間」と捉える: お客様は「説得する相手」ではありません。最高の未来を「一緒に創る仲間」です。この意識を持つだけで、商談は「対決の場」から「共創の場」へと変わり、お客様も積極的にアイデアを出してくれるようになります。

完璧なヒーローになろうとしなくていいのです。少し頼りなくても、お客様と一緒に悩み、考える。そんな等身大のパートナーこそが、今、求められています。

➤ もっと深く知りたいあなたへ(理論編): 筒井さんの記事『「クロージング」という概念を捨てよ。相手が“勝手に契約したくなる”構造設計の技術』では、提案を「売り込み」から「共同作業」へと転換させる、より高度な戦略について解説しています。


第3章:【勘違い③】「営業は“個人”で戦うものだ」という孤独な思い込み

最後の勘違いは、私を最も長く、深く苦しめました。それは「営業は、孤独な個人競技だ」という思い込みです。

私の失敗談:スランプに陥り、誰にも相談できずに一人で泣いていた日々

トップセールスと呼ばれるようになった後も、当然、スランプは訪れます。何をしても上手くいかず、契約が全く取れなくなった時期がありました。

しかし、当時の私は、「トップセールスである自分が、今更、誰かに相談なんてできるはずがない」という、くだらないプライドに縛られていました。同僚は全員「ライバル」。弱みを見せれば、足元をすくわれる。そう本気で思い込んでいたのです。

誰にも相談できず、一人で問題を抱え込み、解決策も見つからないまま、時間だけが過ぎていく。オフィスでは気丈に振る舞い、家に帰ると一人で泣く。そんな日々が続きました。

そんな時、あるお客様の担当者変更で、後任として、私よりも経験の浅い後輩のAくんと、ペアで引き継ぎをすることになりました。正直、当時は「なぜ私が…」と不満に思っていました。

しかし、その引き継ぎの場で、事件は起こりました。私一人では全く引き出せなかった、お客様の「本当の悩み」を、Aくんが、たった一つの素朴な質問で引き出したのです。

「〇〇様って、いつもお忙しそうですけど、一番、何に時間を使われているんですか?」

その瞬間、お客様の表情が、ふっと緩みました。そして、これまで誰にも話していなかったであろう、社内の人間関係の悩みや、評価制度への不満を、堰を切ったように話し始めてくれたのです。

私は、愕然としました。自分がいかに「完璧な提案」という名の鎧で自分を固め、お客様の心を見ていなかったか。そして、後輩のAくんが持つ「素朴な質問力」という才能に、全く気づけていなかったか。

この時、私は自分の「驕り」を、心の底から恥じました。

筒井さんからの教え:「一人で解決できない問題を放置することこそ、チームに対する最大の裏切りだ」

Aくんとの一件の後、私は初めて、自分のスランプについて、筒井さんに正直に打ち明けました。彼は、私の話を黙って聞いた後、静かに、しかし厳しい口調でこう言いました。

「美咲さんが一人で悩んでいたこの1ヶ月間、会社はどれだけの機会損失を生んだと思う?君がAくんの才能に気づくのが、あと1ヶ月遅れていたら、あのお客様は競合に取られていたかもしれない。一人で問題を抱え込むのは、美徳でも何でもない。チームに対する、最大の裏切り行為だ」

筒井さんの言葉は、私の胸に深く突き刺さりました。私は、チームのために戦っているつもりで、実際は、自分のプライドを守るためだけに、チームのリソースを無駄にしていたのです。

私が学んだ本当の共感とは

この最後の失敗から、私が学んだ「本当の共感」は、自分自身、そして仲間へと向けるものでした。

  1. 自分自身の「弱さ」に共感する: 完璧ではない自分、スランプに陥る自分を、まず自分自身が受け入れ、許してあげること。そして、勇気を出して「助けてください」と声を上げること。それが、チームを動かす最初のスイッチです。
  2. 仲間の「立場」や「状況」を想像する: お客様の課題を考えるのと同じように、「上司は今、何を期待しているだろうか」「後輩は、何に困っているだろうか」と、社内の仲間の立場を想像する。ライバルではなく、同じゴールを目指すチームメイトとして、互いの才能をリスペクトし、活用し合う。
  3. 「ユニット営業」という発想: 営業は、個人戦ではありません。それぞれの得意技を持つ仲間とユニットを組み、チームの総合力で、お客様という巨大な課題に立ち向かう団体戦です。私にはないものを、Aくんが持っている。Aくんにないものを、私が持っている。それでいいのです。

もしあなたが今、一人で悩んでいるのなら、どうか、勇気を出して周りを見渡してください。あなたを助けたいと思っている仲間が、きっとすぐそばにいるはずです。

➤ もっと深く知りたいあなたへ(実践編): 私がAくんとの経験から学んだ、具体的なチーム営業の技術については、

👉こちらの記事:『【私の失敗談】先輩の営業同行で「置物」だった私が、たった一度の経験でプレゼンの主役になれた理由』

で、詳しくお話ししています。


まとめ:営業に向いていない人なんて、本当はいないのかもしれない

ここまで、私の3つの大きな勘違いと、そこから学んだ「本当の共感」の技術についてお話ししてきました。

かつての私がそうだったように、今、この記事を読んでいるあなたも、「自分は営業に向いていない」と思い悩んでいるのかもしれません。

でも、私は今、心の底からこう思っています。 営業に「向いていない人」なんて、本当はいないのではないか、と。

あなたが「弱み」だと思っているその個性は、見方を変えれば、他に誰も真似できない、圧倒的な「強み」になります。

  • 「優しすぎて、強く言えない」のではなく、「相手を傷つけない、言葉選びの才能がある」
  • 「内向的で、話すのが苦手」なのではなく、「相手の話を深く、真剣に聞く才能がある」
  • 「緊張しいで、頭が真っ白になる」のではなく、「誠実で、真摯な人柄が伝わる才能がある」

私の3つの勘違いは、結局のところ、自分にないものになろうとして、自分の「才能」を殺してしまっていた、ということだったのです。

あなたが、あなたらしくいること。 その上で、今日お話しした「本当の共感」の技術を使えば、あなたの個性は、お客様の心を動かす、最強の武器に変わるはずです。

この記事は、あなたの長い営業人生の、ほんの入り口に過ぎません。 このサイトには、かつての私を救ってくれた、筒井さんの普遍的な「理論」と、私が実践してきた具体的な「戦術」の全てが詰まっています。

もし、あなたが今日、私の話に少しでも共感してくれたのなら、次はこのサイトの原点である、この記事を読んでみてください。あなたの営業人生を根底から変える「OS」の概念が、あなたを待っています。

➤ あなたのOSをアップデートする(全ての始まり): 筒井さんの記事『営業OSの再インストール─あなたの成果に「再現性」をもたらす思考のアップグレード術』

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