【私の失敗談】先輩の営業同行で「置物」だった私が、たった一度の経験でプレゼンの主役になれた理由

はじめに:気まずい沈黙と、先輩への罪悪感。あなたの営業同行、そうなっていませんか?

「〇〇社の件、来週は先輩にも同行をお願いしよう…」

新人だった頃の私にとって、先輩に営業同行を依頼するのは、安堵と同時に、胸がズキリと痛む瞬間でした。

もちろん、一人では不安な商談に先輩がいてくれるのは、心強い。商品知識も経験も浅い私を、きっと華麗なトークで助けてくれる。そんな期待と安心感がありました。

しかし、商談が始まると、その安心感はすぐに居心地の悪い罪悪感へと変わるのです。

流れるように話す先輩。的確な質問と、淀みない回答。お客様が感心して頷く姿を横目で見ながら、私はただ必死にメモを取り、愛想笑いを浮かべるだけ。まるで観葉植物か何かのように、ただそこに「いるだけ」の存在。

(何か、何か言わなくちゃ…!)

焦れば焦るほど、会話に入っていくタイミングが分からなくなる。先輩がお客様と築き上げた心地よいリズムを、私の拙い一言で壊してしまうのが怖い。

結局、商談の最後までほとんど口を開けないまま、「本日はありがとうございました」と頭を下げて、会社に戻る。先輩は「お疲れ様。あんな感じで進めればいいから」と優しく声をかけてくれるけれど、私の心は少しも晴れません。

(今日も、何もできなかった…先輩の時間を奪っただけだ…)

もし、今これを読んでいるあなたが、かつての私と同じように、営業同行のたびに自分の無力さを感じ、もどかしさと罪悪感に苛まれているなら、この記事はあなたのためのものです。

なぜなら、その「ただの置物」で終わってしまう営業同行は、ほんの少し「考え方」を変えるだけで、あなたの営業キャリアを加速させる最高の学習機会へと生まれ変わるからです。

この記事は、何を隠そう、このサイトの戦略設計者である筒井さんの教えによって、私が「置物」から「主役」へと変わるきっかけとなった、たった一度の営業同行の全記録です。

1.ありがたいけど、成長できない…新人営業が抱える残酷なジレンマ

当時の私は、典型的な新人でした。持ち前の明るさと傾聴力で、お客様と打ち解けて関係を築き、基本的な情報をヒアリングすることには、ある程度の自信がありました。いわゆる「アイスブレイク」や「現状把握」までは、一人でもなんとか形にできていたのです。

しかし、そこからが問題でした。

ヒアリングした課題に対して、自社の商品がどう役立つのかを論理的に説明し、お客様の心を動かす「プレゼンテーション」のフェーズになると、途端に自信を失ってしまうのです。

  • 乏しい商品知識: お客様の業界特有の課題に、どの機能がどうフィットするのか、深いレベルで語れない。
  • 少ない成功体験: 「以前、似たような課題を持つお客様は、これで成功しました」という、説得力のある事例を自分の言葉で語れない。
  • 断られることへの恐怖: 「高い」「今はいい」と言われた時に、どう切り返せばいいか分からず、すぐに引き下がってしまう。

だからこそ、先輩の同行は、私にとって「ありがたい」ものでした。私が最も苦手なプレゼンとクロージングを、全て代行してくれるのですから。契約が取れれば嬉しいし、自分の成績にも繋がる。

しかし、その裏側で、私の心の中では「このままでは、一生プレゼンができない営業になってしまう」という強烈な危機感が渦巻いていました。

先輩がプレゼンをしてくれるおかげで、私はお客様の前で失敗するリスクを避けられる。でも、その代償として、プレゼンの経験を積むという最も重要な成長機会を失っている。

この、安心と停滞が同居する残酷なジレンマ。どうすればこのループから抜け出せるのか、私は一人で悩み続けていました。

2.「その2名営業、お見合いですか?」- 筒井さんからの衝撃的な一言

思い詰めた私は、ある日、当時から社内でトップクラスの成績を収め、理論的な指導で知られていた筒井さんに、勇気を出して相談しました。

「先輩に同行してもらうと、どうしても受け身になってしまって、自分が成長できている実感がないんです。でも、一人だとまだプレゼンに自信がなくて…」

私のまとまらない話を聞き終えた筒井さんは、少しだけ黙り込んだ後、静かに、しかし核心を突く一言を私に投げかけました。

「美咲さん、その2名営業は、気まずい“お見合い”みたいなものだね」

お見合い…?

意味が分からず固まる私に、筒井さんはこう続けました。

「先輩と後輩が横に並んで、どちらも『営業マン』としてお客様の前に座る。役割も戦略も曖昧なまま、どちらかが話し始め、どちらかが相槌を打つ。これでは、お客様もどちらと話せばいいか分からないし、社内の人間関係に気を遣うだけの、ただ気まずい時間が流れるだけだよ。それは戦術ではなく、ただの慣習だよ

そして、筒井さんは私に、先日このサイトでも公開された「ユニット営業」の基本的な考え方を教えてくれました。

参考記事:【受注率2.8倍】なぜトップ営業は「2人」で仕掛けるのか?凡人を天才に変えるユニット営業の構造設計

「美咲さん。ユニット営業は、新人教育(OJT)ではないよ。それは、お客様を感動させるための『劇場型プレゼンテーション』。主役と助演俳優がそれぞれの役割を完璧に演じ分けることで、初めて最高の舞台が完成する。次の商談、僕と一緒に行いこうか。僕が最高の『助演俳優』になって、美咲さんを『主役』にしてみせるよ」

この言葉は、私の営業人生を根底から変える、魔法の言葉となりました。

3.【実録】私が「置物」から「主役」になった、あの日の商談

数日後、私は筒井さんと共に、あるWEB制作案件の商談に臨みました。訪問したのは、ECサイトの売上不振に悩む、老舗のアパレルメーカーです。

事前に、私と筒井さんは、筒井氏の記事で解説されている「役割設定(キャスティング)」を徹底的に行いました。

  • 主役(営業担当):美咲
    • 役割: お客様との関係を構築し、ビジネス全体の課題や、担当者の「想い」を深くヒアリングする「戦略家」。商談全体の進行役を担う。
  • 助演(専門家):筒井さん
    • 役割: 普段は社内でWebマーケティングの分析や戦略立案を行っている「現場のマーケター」という設定。私が引き出した課題に対し、専門的・技術的な見地から最適な解決策を提示する「戦術家」。

商談当日、私はいつもと全く違う感覚で、お客様の前に座っていました。

「今日は、私が責任を持って御社の課題をヒアリングします。そして、その課題解決に最も適した専門家として、現場のマーケターである筒井も同席させております」

いつもなら「先輩の〇〇です」と紹介していた場面で、私は堂々と「私がお話をメインでお聞かせいただき、彼が専門家として助言いたします」と宣言したのです。お客様も「なるほど、営業の方と、技術の方ですね」と、私たちの役割をすぐに理解してくれました。

【第1幕:ヒアリング 〜 私が輝いた時間】

商談の前半は、完全に私の独壇場でした。なぜなら、「プレゼンは筒井さんがやってくれる」という絶対的な安心感があったからです。

私は、契約を取ることや、うまく話すことを一切考えず、ただひたすら、目の前のお客様の悩みを聞くことに集中しました。

「社長がECサイトに懸ける想いは、どのようなものですか?」 「現場のスタッフの方からは、どんなお声が上がっていますか?」 「もし、売上が2倍になったら、会社として次に挑戦したいことは何ですか?」

私が得意な「関係構築」と「課題の深掘り」に全神経を注いだ結果、お客様は徐々に心を開き、単なる「売上不振」という言葉の裏にある、もっと根深い課題や、将来への熱い想いを語ってくれるようになりました。

【第2-3幕:パスとプレゼン 〜 最高の連携プレー】

一通りヒアリングを終えた私は、ホワイトボードにお客様の課題を整理し、こう切り出しました。

「社長、ありがとうございます。御社の課題は、『新規顧客の獲得』と『既存顧客のリピート率向上』という2つの軸で、それぞれ打ち手が必要だということが明確になりました。ここから先は、これらの課題に対し、具体的なWebマーケティングの手法で何ができるのか、専門家である筒井からご説明させていただいてもよろしいでしょうか?

これは、私にとって革命的な瞬間でした。いつもなら自信なく口ごもっていたプレゼンの入り口を、私は「最高のパス」という形で、筒井さんに繋ぐことができたのです。

パスを受けた筒井さんは、マーケターの役割に徹し、穏やかながらも専門的な言葉で語り始めました。

「美咲さん、素晴らしいヒアリングをありがとうございます。社長、お話を聞いていて、御社の課題を解決する鍵は『〇〇』だと確信しました。なぜなら…」

筒井さんのプレゼンは、圧巻でした。私がヒアリングで引き出したお客様の言葉を一つひとつ引用しながら、「新規顧客獲得のためには、このSNS広告が有効です」「リピート率向上のためには、この顧客データ分析ツールを導入しましょう」と、まるで私のヒアリングが脚本だったかのように、完璧な答えを提示していきます。

私は、ただの置物ではありませんでした。私がいたからこそ、筒井さんのプレゼンは、あれほどまでにお客様の心に突き刺さる、オーダーメイドの提案になったのです。

結果、商談は大成功。その場で前向きな検討を約束していただき、後日、無事に受注することができました。

4.たった一度の「成功体験」が、私をどう変えたか

しかし、この日の収穫は、受注という結果だけではありませんでした。私にとって本当に価値があったのは、その後の自分の変化です。

① プレゼンの「型」がインストールされた

私は、筒井さんのプレゼンを、「お客様の課題」と「その解決策」がどう結びつくのか、という最高の“お手本”として、特等席で見ることができました。それは、どんな研修や本よりもリアルな学びでした。次の商いから、私は筒井さんが見せてくれた「課題→解決策」のストーリーラインを真似て、自分一人でプレゼンができるようになったのです。

② 自分の「価値」に気づけた

私は、自分が「置物」だと思い込んでいました。しかし、あの商談を通じて、「最高のヒアリング(脚本)」がなければ、「最高のプレゼン(演技)」は生まれないという事実に気づかされました。自分の強みであるヒアリング力が、チームの成果に不可欠な要素なのだと、心から自信を持つことができたのです。

③ 営業が「楽しい」と初めて思えた

何よりも大きな変化はこれでした。役割分担によって自分の強みを活かせ、苦手な部分はパートナーが助けてくれる。チームで連携し、お客様の課題を解決し、感謝される。

あの気まずいお見合いのような時間が、心からワクワクするチームスポーツに変わった瞬間でした。


最後に:今、営業同行で「置物」になっているあなたへ

もし、あなたが今、先輩の隣で自分の無力さを感じているなら、それはあなたの能力が低いからではありません。ただ、ユニット営業という「戦術」を知らないだけなのです。

勇気を出して、この記事を、そして筒井さんの理論記事を、あなたの先輩や上司に見せてみてください。そして、こう提案するのです。

「次の商談、私にヒアリングの主役をやらせてもらえませんか。そして、先輩には専門家として、私のヒアリングに対する最高のプレゼンをしていただけませんか?」と。

たった一度の、正しく設計されたユニット営業の成功体験。 それこそが、あなたの営業人生を劇的に変える、最高の一手になることを、私自身の経験が保証します。

👉筒井さんの記事はこちら:【受注率2.8倍】なぜトップ営業は「2人」で仕掛けるのか?凡人を天才に変えるユニット営業の構造設計

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