【私の失敗談】先輩の営業同行で「置物」だった私が、たった一度の経験でプレゼンの主役になれた理由

「〇〇社の件、来週は先輩にも同行をお願いしよう…」
新人だった頃の私にとって、先輩に営業同行を依頼するのは、安堵と同時に、胸がズキリと痛む瞬間でした。
もちろん、一人では不安な商談に先輩がいてくれるのは、心強い。でも商談が始まると、その安心感はすぐに居心地の悪い罪悪感へと変わるのです。
流れるように話す先輩。的確な質問と、淀みない回答。お客様が感心して頷く姿を横目で見ながら、私はただ必死にメモを取り、愛想笑いを浮かべるだけ。まるで観葉植物のように、ただそこに「いるだけ」の存在。
焦れば焦るほど、会話に入っていくタイミングが分からなくなる。先輩がお客様と築き上げた心地よいリズムを、私の拙い一言で壊してしまうのが怖い。
結局、商談の最後までほとんど口を開けないまま会社に戻る。先輩は「お疲れ様。あんな感じで進めればいいから」と声をかけてくれるけれど、私の心は少しも晴れません。
もし、今これを読んでいるあなたが、かつての私と同じように営業同行のたびに自分の無力さを感じているなら、この記事はあなたのためのものです。
「ただの置物」で終わってしまう営業同行は、ほんの少し「考え方」を変えるだけで、あなたの営業キャリアを加速させる最高の学習機会へと生まれ変わります。
ありがたいけど、成長できない…新人営業が抱える残酷なジレンマ
当時の私は、典型的な新人でした。アイスブレイクや現状把握までは、一人でもなんとか形にできていたのです。
しかし、そこからが問題でした。「プレゼンテーション」のフェーズになると、途端に自信を失ってしまうのです。
私が苦手だった3つのこと
📌 乏しい商品知識:お客様の業界特有の課題に深いレベルで語れない
📌 少ない成功体験:「以前、似たお客様がこれで成功しました」と言えない
📌 断られることへの恐怖:「高い」「今はいい」と言われると、すぐ引き下がってしまう
先輩の同行は「ありがたい」ものでした。私が最も苦手なプレゼンとクロージングを、全て代行してくれるのですから。
しかし、その裏側で強烈な危機感が渦巻いていました。「このままでは、一生プレゼンができない営業になってしまう」、と。
安心と停滞が同居する、残酷なジレンマ。どうすればこのループから抜け出せるのか、私は一人で悩み続けていました。
「その2名営業、お見合いですか?」―筒井さんからの衝撃の一言
思い詰めた私は、ある日、当時から社内でトップクラスの成績を収め、理論的な指導で知られていた筒井さんに、勇気を出して相談しました。
私のまとまらない話を聞き終えた筒井さんは、少しだけ黙り込んだ後、静かに核心を突く一言を投げかけました。
「美咲さん、その2名営業は、気まずい"お見合い"みたいなものだね。先輩と後輩が横に並んで、役割も戦略も曖昧なまま座っている。これは戦術ではなく、ただの慣習だよ」
そして筒井さんは、「ユニット営業」の考え方を教えてくれました。
「ユニット営業は、新人教育(OJT)ではないよ。お客様を感動させるための『劇場型プレゼンテーション』。主役と助演俳優がそれぞれの役割を完璧に演じ分けることで、初めて最高の舞台が完成する。次の商談、僕と一緒に行こうか。僕が最高の『助演俳優』になって、美咲さんを『主役』にしてみせるよ」
【実録】私が「置物」から「主役」になった、あの日の商談
数日後、私は筒井さんと共に、ECサイトの売上不振に悩む老舗アパレルメーカーとの商談に臨みました。
事前に「役割設定(キャスティング)」を徹底的に行いました。
第1幕:ヒアリング ― 私が輝いた時間
商談の前半は、完全に私の独壇場でした。「プレゼンは筒井さんがやってくれる」という絶対的な安心感があったからです。
私は、契約を取ることやうまく話すことを一切考えず、ただひたすら、目の前のお客様の悩みを聞くことに集中しました。
「現場のスタッフの方からは、どんなお声が上がっていますか?」
「もし、売上が2倍になったら、会社として次に挑戦したいことは何ですか?」
私が得意な「関係構築」と「課題の深掘り」に全神経を注いだ結果、お客様は徐々に心を開き、単なる「売上不振」という言葉の裏にある、もっと根深い課題や将来への想いを語ってくれるようになりました。
第2幕:パス ― 革命的な瞬間
一通りヒアリングを終えた私は、ホワイトボードにお客様の課題を整理し、こう切り出しました。
いつもなら自信なく口ごもっていたプレゼンの入り口を、私は「最高のパス」という形で筒井さんに繋ぐことができたのです。
第3幕:プレゼン ― 最高の連携プレー
「美咲さん、素晴らしいヒアリングをありがとうございます。社長、お話を聞いていて、御社の課題を解決する鍵は確信できました。なぜなら…」
筒井さんのプレゼンは、圧巻でした。私がヒアリングで引き出したお客様の言葉を一つひとつ引用しながら、まるで私のヒアリングが脚本だったかのように、完璧な答えを提示していきます。
私は、ただの置物ではありませんでした。私がいたからこそ、筒井さんのプレゼンは、あれほどまでにお客様の心に突き刺さる、オーダーメイドの提案になったのです。
結果、商談は大成功。後日、無事に受注することができました。
たった一度の「成功体験」が、私をどう変えたか
この日の収穫は、受注という結果だけではありませんでした。私にとって本当に価値があったのは、その後の自分の変化です。
筒井さんのプレゼンを特等席で見ることができた。「課題→解決策」のストーリーラインを真似て、次の商談から自分一人でプレゼンができるようになったのです。
「最高のヒアリング(脚本)」がなければ、「最高のプレゼン(演技)」は生まれない。自分の強みであるヒアリング力が、チームの成果に不可欠な要素だと気づけた。
あの気まずいお見合いのような時間が、心からワクワクするチームスポーツに変わった瞬間でした。
今、営業同行で「置物」になっているあなたへ
もし、あなたが今、先輩の隣で自分の無力さを感じているなら、それはあなたの能力が低いからではありません。ただ、ユニット営業という「戦術」を知らないだけなのです。
勇気を出して、先輩や上司にこう提案してみてください。
たった一度の、正しく設計されたユニット営業の成功体験。それこそが、あなたの営業人生を劇的に変える、最高の一手になることを、私自身の経験が保証します。
元営業ウーマン。現在28歳。新人時代には数字に追われて悩み、営業を辞めたいと思った経験もあるが、学びを通じて成果を伸ばし、営業の面白さに気づいた。今は「営業をもっと楽しく、長く続けられる仕事に」という想いから、読者に寄り添った記事を執筆している。

