【営業にも効く】折れない自信の作り方 ─ 行動と格式で築く本物の自己信頼

はじめに:300名以上の営業を見てわかった「成果を出す人」の共通点
こんにちは。営業組織の戦略設計に携わっている筒井です。
これまで300名以上の営業担当者の育成に関わり、数多くのトップセールスが生まれる瞬間、そしてその逆に、才能がありながら伸び悩む姿を見てきました。その中で、成果を出し続ける人材に共通する、たった一つの、しかし決定的な要素があります。
それが「根拠のある自信」です。
営業の現場では「自信を持て」と、耳にタコができるほど言われるでしょう。自信のある営業は、声のトーン、話すスピード、佇まい、そのすべてに説得力が宿り、自然とお客様を惹きつけます。逆に、どれだけ素晴らしい商品知識を持っていても、自信なさげな態度は「この人から買って大丈夫だろうか?」という不安をお客様に与えてしまいます。
しかし、問題はここからです。多くのマネージャーは「自信を持て」とは言いますが、「どうすれば自信が持てるのか」という最も重要な方法論を教えてくれません。
結果、多くの若手営業は「自分はできる!」と無理やり自己暗示をかけたり、根拠のないポジティブ思考に頼ろうとします。しかし、そんなメッキはアポイントを1件断られただけで、いとも簡単に剥がれてしまう。あなたにも、そんな経験はないでしょうか。
この記事は、そうした一時しのぎのテクニックとは一線を画します。
私自身が過去の研修で語った内容 を基に、小手先の精神論ではない、
行動と経験に裏打ちされた「本物で、折れない自信」をどうやって作り上げていくか、その具体的な設計図をあなたに提示します。この記事を読み終える頃には、「自信」が才能ではなく、日々の習慣と意識で作り上げられる「技術」であることが理解できるはずです。
1. 本当の自信とは何か?ポジティブ思考との決定的な違い
まず、私たちが目指すべき「自信」とは何か、その定義を明確にしましょう。多くの人が「自信」と「自己肯定感(ポジティブ思考)」を混同していますが、これらは全くの別物です 。
自己肯定感と自信の違い
- 自己肯定感/ポジティブ思考:
- 「なんとなくできる気がする」「自分は大丈夫」といった
根拠のない感覚 。 - 自分に言い聞かせる暗示に近い 。
- 「なんとなくできる気がする」「自分は大丈夫」といった
- 自信:
- これまでの経験、実績、努力といった
明確な根拠に基づき、「自分自身を信頼できる」という感覚 。
- これまでの経験、実績、努力といった
ポジティブ思考が悪いわけではありません。しかし、それは砂上の楼閣のようなもの。明確な根拠がないため、少しの失敗や他人からの批判で簡単に崩れ去ります 。朝礼で「今月も頑張るぞ!」と元気に宣言した営業が、午前中のテレアポで心が折れてしまうのは、その自信に「根拠」がないからです。
私たちが目指すのは、**経験という名の杭を深く打ち込んだ、揺るぎない「自信」**なのです。
「根拠のない自信」の本当の意味
では、よく耳にする「あの人は根拠のない自信があってすごい」という言葉は何を指すのでしょうか。
これも実は、全くの無根拠ではありません。この場合の「根拠」とは、“今チャレンジしていることとは別の分野で得た、過去の成功体験”を指します 。
例えば、
- 学生時代、毎日泥だらけになるまで部活動をやり抜いた経験
- 難関大学の受験で、膨大な勉強時間を乗り越えて合格を勝ち取った経験
- アルバイトでリーダーを任され、チームをまとめて目標を達成した経験
これらの経験は、直接営業のスキルとは関係ありません。しかし、「困難な目標に向かって努力し、乗り越えられた」という事実は、未知の領域へチャレンジする際に「あの時できたんだから、今回も自分ならやり遂げられるはずだ」という強力な支えとなります 。
つまり、
一見すると根拠がないように見えても、本人の人生経験の中には必ず「自分を信頼するに足る根拠」が存在しているのです 。
2. 自信がある人には、なぜチャンスが集まるのか
「自信を持つとチャンスが増える」 。これは私が育成の現場で確信している事実です。しかし、神様が自信のある人にだけ特別なチャンスを与えているわけではありません。
結論から言うと、
チャンスが訪れる数(機会)は、誰にでも平等です 。
では、何が違うのか。それは、目の前に流れてくる無数の出来事を「チャンスだ」と認識できる感度の差です 。
人生や仕事は、時間の経過と共に、大小様々な「波」が絶えず押し寄せてくるようなものです 。
- 自信がない人:
- 「誰が見ても分かるような大きな波(=ビッグチャンス)」しか認識できません 。そのため、ほとんどの出来事を何も感じずに見過ごしてしまい、行動のきっかけを掴めずに終わります。
- 自信がある人:
- 「自分ならできる」という自己信頼があるため、ほんの小さな波(=ささやかな機会)に対しても「これも自分を成長させるチャンスかもしれない」と捉えることができます 。
結果として、
自信のある人は小さなチャンスを一つひとつ行動に移すため、圧倒的に行動の数と質が高まります 。その結果、大きな成果を掴む確率が飛躍的に高まるのです。
「厳しい案件」の捉え方で未来が変わる
営業現場の例で考えてみましょう。
ある営業担当者に、俗に言う「厳しい案件(確度が低い、予算が少ないなどの見込み客)」がトスアップされたとします。
- 自信のない営業は、これを「時間の無駄」「どうせ決まらない」と捉え、最低限の対応しかしません。これは彼らにとってチャンスの波ですらありません 。
- 一方、
根拠のある自信を持つ営業は、これを「小さなチャンスの波」と捉えます 。「たとえ受注できなくても、新しい業界の知識が得られるかもしれない」「断られるにしても、その理由を分析すれば次の提案に活かせる」「この担当者との関係が、未来の別の案件に繋がるかもしれない」と。
この
認識の差が行動の質を変え、行動の質が未来の結果を大きく変えるのです 。自信とは、目の前の現実をチャンスに変える「解釈力」そのものだと言えるでしょう。
3. 折れない自信の作り方【2つの具体的ステップ】
では、いよいよ本題です。明日から実践できる、具体的で、本質的な「折れない自信」の作り方を2つのステップで解説します。
ステップ1:自分との「小さな約束」を“絶対に”守る
自信をつけるには実績が必要で、実績を出すには自信が必要だ。多くの人がこのジレンマに陥ります 。この負のループを断ち切る最も強力な方法が、「自分との約束を必ず守る」ことです 。
なぜこれが効果的なのか。その鍵は「潜在意識」にあります。
人間の意識のうち、自分で把握できている「顕在意識」はわずか5〜10%。残りの90〜95%は、自分でもコントロールできない「潜在意識(無意識)」が占めています 。
そして、この潜在意識には「現状を維持しようとする」という非常に強力な性質があるのです 。
もしあなたが、普段から「どうせ自分なんて…」と思っていたり、決めたことを途中で投げ出す癖があったりすると、潜在意識は「約束を守れない自分」が平常運転だと認識します。
その状態で、顕在意識(たった5%)が「今日からポジティブに頑張るぞ!」と意気込んでも、巨大な潜在意識(95%)が「いや、お前はそんな人間じゃないだろ。いつもの自分に戻れ」と、全力で引き戻しにかかるのです 。
これが、他人からどれだけ励まされても効果が長続きしない理由です 。メンタルが弱い自分の方が、潜在意識にとっては「居心地が良い」状態なのです 。
この潜在意識のプログラムを書き換える唯一の方法。それが「自分との約束を守る」という行動の積み重ねです。
私が実践した「自分との約束」
偉そうに語っていますが、私自身もキャリアの初期は三日坊主の常習犯でした 。自己啓発本を買っても最後まで読めない 。通勤時間で勉強しようと決めても続かない 。
このままではダメだと思い、私が徹底したのが「自分との約束を死守する」ことでした 。
- 絶対に遅刻しない
- 電車の遅延で間に合わないかもしれないと感じたら、迷わず自費でタクシーを使います 。会社への報告のためではなく、「自分で決めたルールを破らない」という自分自身への約束のためです 。
- 水曜日と日曜日は、何があってもジムに行く
- 自分との約束は「トレーニングをすること」ではなく「その場所へ行くこと」です 。高熱があっても、インフルエンザの時でさえ行きます 。トレーニングはしませんが、「行く」という約束は守る 。記録的な大雨で自転車が使えない日は、タクシーを呼んで行きました 。
馬鹿げていると思うかもしれません 。しかし、この行動には絶大な意味があります 。
大雨だろうが、高熱だろうが、「決めたことを実行する自分」を、一番近くで見ているのは、他の誰でもない自分自身です 。この経験の積み重ねが、「自分は、やると言ったことは必ず実現できる人間だ」という認知を潜在意識に刷り込んでいくのです 。
まずは、どんなに小さなことで構いません。
- 通勤中にWebの記事を1本必ず読む
- 毎朝5分間、ロープレの練習をする
- 1日100件、必ず電話をかける
- 寝る前に、必ず翌日のタスクリストを作成する
何でもいい。**自分で決めた約束を、何があっても守り抜く。**そして、できた自分をきちんと褒めてあげる 。この繰り返しが、自分自身への信頼、すなわち「折れない自信」の土台を築き上げます。
ステップ2:自分の「格式」を高める
自信は内面から湧き出るものですが、同時に**「他人からどう見られているか」
によっても大きく補強されます。そこで重要になるのが、自分自身の「格式」**を高めるという意識です 。
研修では、よく「高級寿司店とチェーンの回転寿司店」の例え話をします 。
数年前に、チェーンの回転寿司店で醤油差しを舐めるといった迷惑動画が問題になりました 。しかし、銀座の高級寿司店で同じような事件が起きたという話は聞いたことがありません 。
なぜか。それは、
店の持つ「格式」が、客の行動を無意識のうちにコントロールしているからだと考えられます 。
- チェーン店では、携帯電話を見ながら片手で寿司を食べる人もいるでしょう 。
- しかし、高級店のカウンターで同じことをする人はまずいません 。別に店から禁止されているわけではなくても、その場の雰囲気、職人の佇まい、空間全体が持つ「格式」が、「ここでは、そのような振る舞いは許されない」という空気を生み出しているのです 。
これは営業も全く同じです。
あなたの「格式」が低ければ、お客様はあなたを軽んじます。平気で約束を破り、後回しにし、無茶な要求をしてくるでしょう 。
逆に、あなたの「格式」が高ければ、お客様はあなたをプロフェッショナルとして尊重し、真剣に耳を傾け、礼儀を尽くして接してくれます 。
営業としての「格式」は何で決まるか?
では、営業の「格式」とは何でしょうか。それは、高級寿司店がそうであるように、あらゆる要素の集合体です。
- 商材知識(=食材):
- 自社の商品・サービスを誰よりも深く理解している。
- 営業技術(=技術):
- ヒアリング、プレゼンテーション、クロージングのスキルを磨き続けている。
- 接客・佇まい(=ホスピタリティ):
- 言葉遣い、身だしなみ、姿勢、時間厳守といった基本的な行動規範 。
- 準備・雰囲気作り(=内装・ファシリティ):
- 商談前の徹底した情報収集、相手に合わせた資料の作り込み、場の空気を支配する雰囲気作り 。
これらの要素を
意識的に磨き続ける努力 、それ自体が「自分はプロとしてやるべきことをやっている」という根拠のある自信に繋がります 。そして、その自信があなたの佇まいとなって現れ、「格式」としてお客様に伝わるのです。
自分の格式を高める努力を、ステップ1で解説した「自分との約束」に設定してみてください 。
例えば、「毎晩30分、競合他社の製品について調べる」「毎週末に、その週のベストだった商談とワーストだった商談を言語化して記録する」といった約束です。
この約束を守り続けることで、あなたの専門性は高まり、それが自信となり、格式となって現れる。そして格式の高いあなたの前では、お客様の態度も変わる。この好循環を生み出すことが、トップセールスへの最短ルートなのです。
4. まとめ ─ 自信は「自分への信頼」を積み重ねる技術である
最後に、今日の要点をまとめましょう。
- 本当の自信とは「自分自身への信頼」であり、経験という「根拠」によってのみ培われる 。
- 自信を持つと、小さな出来事を「チャンス」と捉えられるようになり、行動の量と質が劇的に向上する 。
- 折れない自信をつけるには、以下の2つを徹底すること。
- どんなに小さなことでも「自分との約束」を絶対に守り、潜在意識を書き換える。
- 営業としての「格式」を高める努力を続け、自分と周囲の両方から信頼される人間になる。
営業においても、人生においても、自信は最大の資産です。そしてそれは、一部の特別な人だけが持つ才能ではありません。
自信とは、自分を裏切らない行動を、意識して、毎日積み重ねていく「技術」であり「習慣」です。
この記事を「いい話だった」で終わらせないでください 。まずは一つ、本当に小さな、でも絶対に守れる「自分との約束」を決めてみてください。そして、何があってもそれを守り抜く。
その小さな一歩が、誰にも、そして何にも折れない、あなたの揺るぎない自信を作り出す最初のレンガとなるのですから
1400名規模のITベンチャー企業の営業部長・現ストラテジスト。
これまでに300名以上の営業マンの育成や営業組織の設計に携わり、商談スクリプトの構築や各業界のトップセールスの営業スキルの暗黙知を形式知にするなどの教育メソッドを体系化。
営業を「属人的な才能」ではなく「再現できる仕組み」として確立することを専門領域としている。
本サイトでは、営業力を高めたい個人や、営業教育を仕組み化したい法人に向けて、現場で成果を出すためのノウハウと知見を発信している。